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null 烏帽子を直しながら顔を上げる敦隆を、部下が慌ただしく手招きした。 「来てくれ。不審な者たちを捕らえてある」 「不審者だと」  手に太刀だけを握って、敦隆は駆け出した。  このあたりの間道は迷いやすく、地元の人間以外が通ることは滅多にない。長引く冬の間に道は荒れており、踏み固められた雪がまばらに残っていた。  木々の隙間を縫って、馬の啼く声が聞こえた。  敦隆の部下たちが弓を構えて道をふさいでいる。彼らと対峙するようにして見慣れない連中が立ち止まっていた。旅装の者たちが三人である。不審者というのは、どうやら彼らのことらしい。  たしかに奇妙な連中であった。  一人はかなり背の高い男で、戦場に向かう武士のように、髻《もとどり》を解いて背中で無造作に束ねている。日焼けした骨相は猛々しいが、子どものような愛嬌のある瞳をしていた。そのせいか、初めて出会ったにもかかわらず奇妙な親しみが感じられた。人を惹きつける磁気のようなものをまとった男だと、敦隆は思った。  もう一人の男は、まるで対照的な、すらりとした細面の美男だった。色白く、鼻梁は細く、唇は朱を塗ったように紅い。衣装も端正で、身分のある貴族のように見受けられる。  そしてもう一人の同行者は、女だった。見るからに高価そうな紅の打衣《うちぎぬ》に雑袍《ざっぽう》をまとった旅装束である。市女笠《いちめがさ》と小袖に隠されて顔は見えないが、まだ若い。高貴な身分の娘であるのは間違いないだろう。  なんにせよ、このような間道を通るのにふさわしい者たちだとは思えない。そもそも彼らが、どのようなつながりの一行なのかということすら、まるで見当もつかなかった。 「——この連中に俺たちを捕縛するよう命じたのは、あんたか?」  敦隆に気づいて、乱髪《らんぱつ》の美丈夫が呼びかけた。  荒っぽい口調だが、目が笑っている。特に腹を立てているわけではないらしい。 「甲斐国検非違所の日下部敦隆だ。故あって、この間道の警護にあたっている。無礼は承知の上で、あなたがたの身元と行く先を聞かせていただきたい」 「検非違所?」  男が、からかうようにつぶやいて笑った。