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ママバッグ シーバイクロエ編集

カモフラージュ 迷彩柄 トートバッグ、クラッチバッグ 2点セット
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カモフラージュ 迷彩柄 トートバッグ、クラッチバッグ 2点セット 
 高次は伸びた富蔵の月代《さかやき》を剃《そ》った。陸が近づいてきたせいか、月代を剃った富蔵の顔に生気がもどった。  その日の夕方に、ブルックが全員を甲板に集め、自分が天測した数字を示した。 「私の天測では明日の早朝に、サンフランシスコの山なみが見えるはずだ」  おおっと歓声があがった。 「ジョンマン。君の予測はどうか」 「ブルック大尉と同じです。あすの早朝には陸が見えると思います」  高次はその晩眠れなかった。富蔵を看病しながら早暁を待ち、寅《とら》の刻(午前四時ごろ)に甲板に出てマストに登った。アメリカにはやく着けば富蔵の病がよくなる。  安政七年(一八六○)、二月二十六日。高次はサンフランシスコの山なみを見るべく、咸臨丸の前方に目を凝らした。東の水平線が白みはじめた。空に雲はなく、水平線にそって眉《まゆ》のようなすじ雲が見えた。  卯《う》の刻(午前六時ごろ)。望遠鏡を目に当てた万次郎の第一声が上がった。 「見えたぞ。左舷《さげん》の前方に山だ」  高次も左舷前方に目を凝らした。だが肉眼ではまだ見えない。水平線はさらに明るさをました。右手の先にはっきりと動かぬ黒い山かげを見た。 「おおっ。山じゃ。山が見えたぞう」  高次が右手を突き出した。咸臨丸の船尾に日の丸が揚がった。日本人初の太平洋横断は成功した。サンフランシスコは間近である。      六  カリフォルニアの空は青く澄みわたり、空気はからりと乾いて清々《すがすが》しかった。  高次は船べりから初めて目にするアメリカの遠景に見入った。サンフランシスコ湾を囲む山々は、ところどころ赤茶けた剥《む》き出しの地表が見えるが、多くは緑の潅木《かんぼく》が生い茂って、明るい陽光に緑の葉が輝いている。湾を囲む美しい緑の山々が、サンフランシスコ湾を外海の荒波から守り、波静かな湾内に洋式帆船が碇泊《ていはく》していた。
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