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クロエコピーショルダーバッグ レディース 3S0851 161 001編集

    4  深夜零時。津ノ谷村を縦貫する国道一六八号線は、全速で疾駆する二十余台のパトカーのきらめきであふれて、路面が悲鳴をあげた。  真先に到着したのは井狩本部長自身だった。  先着していた新宮署長の案内で、つぶさに現場を調べると、柳川邸に引きあげて、紀美をはじめ、家人たちから詳しい事情を聴取した。  さすがに三十年あまりも捜査畑で鍛えた眼力の持主であった。一とおりの事情聴取がすむころは、健次たちの動きの大様は、ありありと手に取るように読めていた。 「ああいうところで待ち伏せていたのだから、犯人が刀自の当日の予定を事前に知っていたのは疑いないな。問題はまずその情報の漏れどころだ。串田さん。大奥さまの予定を知っていたのはだれだれです?」  急を聞いてかけつけた国二郎らへのあいさつもそこそこに、直ちに執事を呼んで調査にかかる。 「とおっしゃいますと、家人の中にだれか内通者がいるとでも?」  串田執事はとたんに顔色を変える。 「ばかな。そのへんの出来合いのブルジョアならいざ知らず、ご当家に限ってそんな不心得者がいる道理がない。そんなこと言ったら、まっさきに疑われなきゃならんのは、同行していた吉村君じゃないか。そうではない。家人のだれかが、むろん悪気ではなく、ちょっとした不注意で……不注意ともいえんな、こんなことが起こるとは、だれも夢にも思っとらんもの。とにかく漏れたにはちがいないのだから、そのいきさつを確かめるのが、犯人の足どりを追う第一歩というわけですよ」  かんで含めるように説明されて、執事の顔に生色がよみがえる。 「さようでございますな。そういうことでしたら、新太以外には……」 「新太? 新太とは?」 「来て三月ほどですから、本部長さんもご存知ないのやけど、四十か五十ぐらいの浮浪者でしてな。一どここで施しもらいまして、それから来ればもらえるもんや思うたらしくて、毎日のように来よりますのを、大奥さまがお目を止められて、草むしりでもさせたらいわはって、家へ入れることにしましたんです。強度の知恵おくれいうんですやろな。ことばもほとんどしゃべれんで、それでも大奥さまだけはわかるらしくて丁寧におじぎなどしよりまして、大奥さまも、新さん、新さんいうてかわいがっておられました。仕事は半人前もでけしまへんけど、やれいわれたことはいつまでもやっとる……根は正直なんやろな、とわしらも思います。そういう男ですから、この騒ぎも知らんと、ぐうすら寝とりますが、まずこの新太だけは、予定などいうことはよう知らんのやないか……」 「早い話が、その男以外の家人全員が知っとった?」 「はあ。一口に申しますとな」 「ではね、串田さん、あなたから家人の一人一人に、そとのだれかに大奥さまのきょうのコースのことを話したものはいないか、聞いてみて下さい。話したからといって罪になるわけでもないし、別に責任がどうこういうことも絶対にない。本部長のわしが保証するから、安心して話すように、と言ってね。その結果を、こんどはなるべく一口で報告して下さい」
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