miumiu 財布 2012
null
null 真樹子は、とりあわなかった。  加代の夫に対する仕えぶり、素直によく働く娘達、そして和やかな雰囲気《ふんいき》の加代の家庭を、真樹子は今日自分の目で見ているのだ。 「本当よ。会いたくなると、外で会うの」 「そう」  加代はむかしから、話がうまい。小川がさらさら流れるような早口で、抑揚もない話し方なのに、ふしぎにどこか人を魅きつけるものがある。 「会うといってもね、真樹ちゃんたちのように、コーヒーをのんで、ただじっと顔を見合わせているなんていうのとはちがうの」 「ふーん」 「自分でもね、あとからどうしてあんなことを言ったり、したりしたのかと思って顔をあかくするようなことを、言ったり、したりしてくるのよ」  そういいながら加代は顔もあからめなかった。 「じゃ、御主人をうらぎってるのね」  真樹子は詰《なじ》る口調になった。 「真樹ちゃん、そんな目で見ないでよ。わたしが他の人と遊んだからって、減るわけじゃないんだもの」  未婚の真樹子は何だか、からかわれているような気がして、加代の言葉を信ずることはできなかった。  朝になると、上の娘が食事の支度をし、下の娘は掃除をしている。二人は真樹子に声を揃《そろ》えて明るく挨拶をした。 (何と健康な雰囲気だろう)  真樹子は、ゆうべの加代の話を思いだしていた。 (愛人がいるなんて、加代ちゃんったら昔と同じだわ。でたらめばかり言って……)  加代は元気な顔で、卵を焼いていた。